トップページ > 子どもの歯にまつわるトピックス > ラバーダムについて
ラバーダムは治療・処置する歯を唾液から隔離するためのラテックス等の素材で作られた薄いシートです。
このシートを歯に装着するラバーダムクランプという器具とシートを張るためのフレームから構成されています。
これらを用いて歯科診療環境を作ることをラバーダム防湿法と言います。
ラバーダムを使用することにより治療・処置する歯を唾液や細菌感染から守ると共に歯科医師の視野を確保することで的確な治療・処置が可能となります。
長い歴史があり歯科医療に先進的な諸外国では日常的に使用されていますが、残念ながら日本での使用率は低いのが現状です。
しかし、最近は小児歯科の分野以外でも良質な歯科治療をめざす歯科医師の間で積極的に使用する気運が高まってきています。
次のようなメリットがあります。
これらは代表的なもので、これ以外にも様々なメリットがあります。
特にお子さんは唾液が多く、治療の際に身体が動きがちですのでラバーダムの使用は不可欠です。
使用すれば虫歯(むし歯)部分を確実に取り去ることが可能となり、見た目もきれいで良好な治療につながります。
比較的軽い虫歯(むし歯)を治療する場合にはたとえばCRと呼ばれる材料を充填しますが、
ラバーダムにより唾液が侵入せず乾燥状態が得られるため接着の効果が確実に得られます。
それにより、一度治療した充填物が脱落して再治療となる可能性が極めて低くなります。
別項にあるシーラントについても同様です。
歯髄(歯の内部)に達する深い虫歯(むし歯)や、さらに進んで歯の中が膿んでしまった状態では
「歯内療法」という治療分野になっていきますが、ここでもラバーダムは唾液中に含まれる無数の細菌をシャットアウトしてくれるため効率よく治療が進み、
いわば「小さな手術室」のような役割を果たします。
結果として同じ歯の治療が延々と続くことなく通常は数回以内で終わり、治療後に歯肉が腫れて再治療となることも稀です。これらもラバーダムの効果です。
新型コロナウイルス等のウイルスや細菌の感染防止にラバーダムの使用は極めて有効で歯科の各学会や歯科医師会も推奨しています。
ラバーダムを使用しなければ口の外へ飛散してしまう飛沫はラバーダムにより90%以上減少するというデータがあり神奈川県歯科医師会の「新型コロナウイルス感染症への対応指針」にも収載されています。
また、当院ではラバーダムを常時使用するために、多くの歯科医院で診療チェアの横に設置されているスピットン(うがい設備)が不要なため存在せず、
ブクブクうがいで唾液が吐き出されて飛び散ることもありません。
当院ではラバーダムと共に口腔外バキュームも併用し小児歯科専門医院ならではの最強の感染予防システムのもとで診療しています。
天然ゴムであるラテックスのアレルギーはお子さんにも多いので注意が必要です。
アレルギーが疑われる場合にはラテックス不使用の素材で作られたノンラテックスダムを使用します。
ラテックスフルーツ症候群と言ってキウイフルーツ、アボカド、バナナ、パイナップル、クリ、イチジク、
ヘーゼルナッツ等にアレルギー反応が出たことがあるお子さんについてはラテックスアレルギー発症の可能性があるため、
必要に応じてノンラテックスダムを使用します。
ノンラテックスダムの使用例
局所麻酔の必要がない治療・処置では表面麻酔を使用してもラバーダムクランプを歯に装着する際に違和感や軽い痛みを感じることがあります。
強いて言えばこのあたりがデメリットかもしれません。
お子さんは嫌がることもありますが、一度装着してしまえば口の中に水も入らないし、動いても唇や頬の粘膜、舌が傷つくこともなくお子さんにとっても楽に治療ができます。
嘔吐反射が強いお子さんや他の歯科医院で拒否のために治療ができなかったお子さんでも円滑に治療が進むのはラバーダムのおかげです。
強いてもう一つデメリットをあげるとすれば保護者ご自身にラバーダムの装着経験がある方が少ないため、イメージを伝えにくくご説明に苦労するという点です。
これについてはプリントをご用意してご理解いただけるように努めています。
※症例写真はすべて、患者さん・保護者の承諾を得て掲載しております