比較的重度の乳歯の奥歯の虫歯(むし歯)の際に使用します。
歯の全面が虫歯(むし歯)になってしまった場合、虫歯(むし歯)が歯髄(歯の内部)まで達していて生活歯髄切断法をおこなった後や、歯髄が感染して膿んでしまい感染根管治療をおこなった後は、歯の強度が低くなるため乳歯冠で治療しておけば安心です。一つ上の回答もご参照ください。当院では、3M社のナイクロ乳歯冠を使用しています。いくつものサイズの中からちょうど良い大きさの乳歯冠を選び、さらにそれがピッタリ入るように歯を削るのはある程度の熟練を要します。
虫歯(むし歯)の治療開始をきっかけに保護者の方がお子さんの食生活を大きく見直し、ブラッシングもとてもがんばってくださることで、その後は虫歯(むし歯)にならないというケースもあります。しかし、多くの場合は生活にそこまで急激な変化は起こらず、虫歯(むし歯)の多かったお子さんはその後も虫歯(むし歯)になりやすい傾向が続きます。
乳歯冠で治療した歯は二度と虫歯(むし歯)になりません。一方、CR修復(歯と同色のプラスチックの材料)では充填物の境目から再び虫歯(むし歯)が発症してしまいがちです。
下の写真は重度虫歯(むし歯)1歯を乳歯冠で治療、軽度の1歯をCRで修復し、3年間定期診査に来院されなかったお子さんのその後です。
乳歯冠で治療した歯は全く無傷ですが、当時はきれいに治療したはずのCRの方はご覧の有様です。
乳歯冠は虫歯(むし歯)になりやすいお子さんにとって、永久歯が生えてくるまでの期間に乳歯を虫歯(むし歯)から守ってくれる優れた治療法と言えます。
ある時、筆者(エンゼル歯科院長 佐々木)がTwitterに「乳歯冠は重度虫歯(むし歯)だった乳歯の奥歯を何でも噛める歯に変身させて、生えかわりまで成長を助けてくれるしっかり者。どんなに多くの歯科医と子どもがこいつに助けられてきたことか。たしかに見た目はいかついが、あまり嫌わないではくれまいか。」と投稿しました。
それを読まれた「うさっぱ先生」(歯科医師で漫画家・イラストレーター @usappa_)が後日漫画にしてくださり、ご著書の「うさコレ」にも掲載してくださいました。
乳歯冠はたしかに見た目は良くありませんが、その性能はすばらしく、長い場合は10年以上もお子さんの歯の健康を守り、成長を助けてくれるしっかり者なのです。