2019年07月02日
小児歯科専門医の虫歯(むし歯)診査法
今回は、小児歯科専門医で実施している、虫歯(むし歯)の有無を調べるための診査法を中心に当院の例をご紹介したいと思います。
特に、先天性心疾患をお持ちのお子さんの保護者の方々と、主治医である小児科医の先生方に読んでいただきたい内容です。
先天性心疾患のお子さんは、虫歯(むし歯)の発症やその治療等をきっかけとして起きることが多い感染性心内膜炎(IE)という病気を予防していかなければならない点で、より精密な歯科の診査と綿密な虫歯(むし歯)予防・治療プランを必要とします。
虫歯(むし歯)の予防や早期発見と的確な治療が、将来に向けて健康に過ごしていかれるかどうかを左右するとも言えます。
3歳児健診や幼稚園・保育園・学校の集団健診及びそれに近いレベルの歯科診査ではじゅうぶんではありません。
集団健診と個別の診査の違いについては過去に記載しておりますのでご一読ください。
初診時の診査
新しく当院にいらしたお子さんは下のような用紙に歯の状態の記録を取ります。
1歯ずつ、全ての歯面の状態を赤と青の色鉛筆を用いて記録していきます。
乳歯でも永久歯でも、奥歯は6面、前歯は4面の展開図として表現してあり、歯の溝も印刷してあります。
虫歯(むし歯)等の病変は赤で記録します。
治療済み、シーラント塗布済みの部分があれば青で塗ります。
初期虫歯(むし歯)は薄い赤で表現します。
歯の動揺(揺れ)の程度も記載し、例外的な状態や表現しきれないものは加筆します。
ここまでの所要時間はお子さんの協力度が高くても7~8分はかかります。
さらに、必要な場合はX線診査をします。
上の前歯部分には過剰歯(余分な歯)が潜んでいたり、永久歯の先天欠如(歯の数の不足)が多いので、おおむね4歳以上のお子さんは必ず1枚上の前歯部分を撮影します。
奥歯の間の虫歯(むし歯)の診査のために、バイトウイング法(咬翼法)という撮影法で咬んだ状態の奥歯を左右から1枚ずつ撮影します。
目で見る診査(視診)や器具で触れての診査(触診)では見つけられない歯と歯の間の虫歯(むし歯)もX線で発見することができます。
要治療の虫歯(むし歯)がなかった場合はシーラント等の予防処置についてを、治療が必要な場合は治療内容をご説明、ご提案し(処置・治療方法や通院回数等の診療計画書を作成して当日お渡しします)ご同意があれば処置・治療を開始します。
最終日には保護者の方にお子さんへの歯ブラシとフロスの練習をしていただきます。
定期診査時の診査
虫歯(むし歯)が多かったり重度だったお子さんは処置・治療完了から3か月ごとに、虫歯(むし歯)が少ないか軽度だったお子さんは4か月ごとに、予防処置だけで済んだお子さんは6か月ごとに、ハガキで時期をご連絡して予約来院していただき定期診査をします。
診査法は初診の時とほぼ同じで、再度1歯ずつ全ての歯の面を赤と青の色鉛筆を用いて記録していきます。
当院での治療やシーラントが完了していて問題がなければ青で塗る部分が多いはずです。
X線については必要があれば撮影します。
バイトウイング法(咬翼法)X線を、そのお子さんの虫歯(むし歯)のリスクに応じてときどき撮影することは、新しい虫歯(むし歯)や治療済みの歯の二次う蝕(充填物と歯質の間からの虫歯(むし歯)の再発)の発見にとても有効です。
要治療の虫歯(むし歯)や要抜歯の乳歯がなければ予防処置をします。
特に新たに生えてきた奥歯には、乳歯でも永久歯でも積極的にシーラントをしていきます。
その後もリスクに応じて3~6か月の間隔で、上記と同じように診査を繰り返していきます。
保護者から電話でご相談があった場合も直近の診査記録を見れば気になる歯の状況が一目でわかり、すぐに来ていただくべきか様子を見てからで良いかも判断しやすくなります。
きょうだい(兄姉弟妹)の記録を同じ場所で管理しており、きょうだいの虫歯(むし歯)の状況や経験した治療、処置の内容もすぐに見ることができ、保護者へのご説明や予防、治療計画の立案に役立てています。
小児歯科専門医では、急患を除く全ての患者さんについてこのようにきめ細かい定期診査と記録をおこない、それに基づいて年齢や歯の状態に応じた予防処置や治療をすることでお子さんの歯の健康を守っています。
もちろん、専門医でなくてもこうした診査をしている歯科医師は数多くいます。
一方で、目で見るおおまかな診査のみおこない、精密な診査や歯面ごとの記録を残さない歯科医師もいます。
保護者としては歯科医院で定期診査を受けていたという認識であっても、詳細な診査がおこなわれていない不安がある方は、
日本小児歯科学会や全国小児歯科開業医会(JSPP)のサイトもご参考に小児歯科専門医にご相談ください。