サイトリニューアル!!

このたび、エンゼル歯科のホームページを全面リニューアルし、新たにスマートフォンにももうすぐ対応。

制作をお願いしているのは、アンテナ株式会社さん。https://www.ante.co.jp/

吉井社長、担当の石井さん、小林さんにはたいへんお世話になりました。

この院長にっきのブログも新しくなりましたので、がんばって更新し、小児歯科に関する情報をお届けしたいと思います。

乳幼児のむし歯(虫歯)治療の実際 その2

乳歯のむし歯(虫歯)治療の中で、前歯の重度むし歯(虫歯)の治療法を前回の記事に続いてご紹介します。
一部に専門的な画像を含みますので、閲覧はその点をじゅうぶんにご承知おきください。
ダイレクトな写真を見たくない方はご遠慮ください。

平塚の街は七夕祭りが例年より規模を縮小しておこなわれました。

写真はスタッフが作ってくれた当院の受付にある七夕飾りです。
スペースがないのでほんの小さなものですが、可愛いですね。

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さて、当院の診療用ユニットには、前回書いたようにブクブクうがいのための「スピットン」がありません。

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ある2歳前の患者さんの治療前の状態です。

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上の前歯4本のうち2本は歯の内部にある歯髄までむし歯(虫歯)による細菌感染が及んで膿んでいたので、「感染根管治療」をおこない、それが終了した時点が下の写真です。
治療中の画像は歯科医師(私)から見た状態なので、上下が逆になりますが、上の前歯の治療です。
この日は、歯の内部の治療をしないで済んだ歯と、既に感染根管治療を終えた歯を合わせて歯冠修復(歯の外観、形態の回復)をしました。
1)局所麻酔と2)ラバーダムの装着まで前回書きました。

https://angel-dc.at.webry.info/201107/article_1.html

3)むし歯(虫歯)の部分を切削、除去、整形
(その1)で記した局所麻酔、ラバーダム装着後に虫歯(むし歯)の部分を削って形を整えます。

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4)コンポジットレジンによる歯冠の作製
一種のプラスティックである、光で固まるコンポジットレジンという材料と、専用の接着剤(ボンディング剤)を使用します。

ボンディング剤を塗布し、照射器で光照射します。

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ピドフォームというシェル状の型を用意し、歯に合わせて専用のハサミでトリミングします。

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中にコンポジットレジンを流し込んで歯の形を作り、

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圧着して光照射で固めます。

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型を撤去した後、研磨、調整をして完成です。
下の写真は、上の前歯4本の他、乳犬歯なども治療を終了した後日に撮影したものです。
おしゃぶりの影響があって、かみ合わせは開いてしまっています.。
http://angel-dc.at.webry.info/201011/article_1.html の例もご覧ください。

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治療直後は歯肉からの出血がありますが、数日できれいになりますので、その後はむしろ積極的なブラッシングが望まれます。
かみ合わせの状態によっては稀に脱落してしまうこともありますが、多くの場合は問題なく経過します。
生えかわりまで3~4ヶ月ごとに定期診査をしてチェックしていきます。

前回も書きましたが、健康保険の範囲内の治療です。
上の前歯の歯の形を作るこうした歯冠修復法の名称ですが、健康保険診療においては「CRジャケット冠」あるいは「複合レジン冠」と呼ばれています。

今回ご紹介したようなケースの(前歯4本に限っての)治療回数は、感染根管治療に3~6回ほど、その後の歯冠修復に2回(左右2本ずつ)の通院です。
もう少し軽症で感染根管治療が不要なら4本を治療するのに2本ずつ2回で済みます。

また、このようなケースで窓口負担が2割の場合の費用は、前歯4本に関しての合計の概算で、初再診料や感染根管治療分を含め1万円弱程度となります。
小児医療費助成制度の対象となっていれば窓口負担はありませんが、お住まいの都道府県以外の医療機関を受診した場合は一旦窓口で2割分を支払う必要があります。

たしかに治療はたいへんではあります。
お子さんは大泣き、私たちは汗だくです。
でも、そのまま放置すれば抜歯せざるをえなくなります。
治療が不可能なほどむし歯(虫歯)が進行してしまっていれば、永久歯を守るためにもむしろ早期の抜歯が必要です。
ご紹介したケースはその一歩手前の状態だったと言えます。

治療が可能であるなら、人工物とはいえ外観と機能を回復することは精神面(保護者のそれも)を含めた大きなメリットがあると思っています。

低年齢児の重度むし歯(虫歯)でお悩みの方で、神奈川県平塚市から遠くない範囲にお住まいか、あるいはご実家など拠点がある保護者の方はご相談いただければと思います。
遠方の方は下記のサイトもご参考いただき、相談先を探してみてください。

http://www.jspp.net/
http://www.jspd.or.jp/

乳幼児のむし歯(虫歯)治療の実際 その1

乳歯のむし歯(虫歯)治療、特に低年齢の乳幼児のむし歯(虫歯)治療の手順について、他の歯科医師に向けたセミナー的なことをする機会がときどきあるので、最近プレゼン用資料を作ったりもしてみました。
私たち歯科医師が籍を置いた大学歯学部の教育の中では、たとえば低年齢児の重度のむし歯(虫歯)治療について具体的な実技まではほとんど学ぶことができません。
卒業後にも専門が小児歯科とは遠い分野だったりして研修する機会がなければ、歯科医師によってはこうした治療法の存在さえ知らないということさえあります。
なので、私にも道案内役の声がかかるというわけです。

当院サイト内でも既に一部掲載していますが、一般の方々がご覧になっても差し支えない範囲でこのブログでも治療の手順を簡単にご説明したいと思います。
なお、この方法は私が恩師から学んだもので、私なりの多少のモディファイはあっても、スタンダードな術式です。
実施している歯科医院の数は少ないと思いますが、当院独自のスタイルということでは全くなく、健康保険の範囲内で受けられる治療です。

乳歯の前歯の重度の虫歯(むし歯)の治療法を例として順番にご紹介します。
一部に専門的な画像を含みますので、ここから先の閲覧はその点をじゅうぶんにご承知おきください。
ダイレクトな画像を見たくない方はご遠慮ください。

まず前提として当院の場合は、治療中は保護者の方は待合室でお待ちいただき、お子さんと歯科医師とスタッフとで診療環境を作ります。
保護者の前で治療をおこなう歯科医院も多いと思いますが、当院では分離スタイルです。(これには理由がありますし、専門家にも一般の方々にも賛否があると思いますが、その話は別の機会としましょう。)

それから、当院の診療用ユニット(治療用の椅子)にはスピットンという「うがい」のための設備がありません。
治療の途中で起き上がってコップでブクブクうがいをすることがなく、唾液や切削器具から出る水は、後で述べる「ラバーダム」を使用しながら全てバキュームで吸引します。

以下は治療の手順です。

1)局所麻酔 
使用する局所麻酔薬や器具は成人の場合と同じですが、小児では骨の構造が成人より緻密でないために、表面麻酔薬を塗った粘膜の下に軽く注射針を入れて、風船を膨らませるような方法を取るため、痛みは少なく時間も数秒間で済みます。
3歳以上で、ある程度理解力があるお子さんの場合は、痛みが少ないということが、次回以降の診療でお子さんの協力を引き出すことに大きく影響しますので、ごく浅いむし歯(虫歯)以外は局所麻酔を使用して治療します。

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この写真は以下に掲載するのとは違う症例で、局所麻酔の様子のみのご参考としてください。
 
2)ラバーダム装着
ラバーダムというゴム製のシートを装着し、処置する歯を隔離します。

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この写真もこれからご説明するケースのものではありません。
ラバーダムがしっかり装着できるかどうかが、治療が成功するか否かのキーポイントになります。
ラバーダムを使用することで治療する部分への唾液の侵入を防ぎ、修復材料が確実な接着効果を得られます。
また、高速回転する器具や、刺激の強い治療用薬剤からお子さんの粘膜を守るためにも必要で、口の中から喉に物が落ちることもありません。
ラバーダムを使いこなすことのできる歯科医師は、一度治療した歯のコンポジットレジン修復(歯と同色のプラスティックの材料)がたびたび脱落してしまうという経験をしないで済む世界に住んでいます。

乳幼児のむし歯(虫歯)治療の実際(その2)↓に続きます。

https://angel-dc.at.webry.info/201107/article_2.html

歯の数の過不足について

梅雨晴れの青葉も目にまぶしい季節となりました。
震災、原発への対応は依然続いています。
一歩ずつでも進んで欲しいと思います。
 
さて、今回お届けする情報は「歯の数」についてです。

通常、乳歯は20本、永久歯は智歯(おやしらず)を除くと28本です。
しかし、上記の標準の数でない方も意外に多く、そのために少し注意が必要な場合もあります。

・歯の数の不足
乳歯の前歯には癒合歯(2本がくっついて1本になった形の歯)がよくみられます。
下の写真の例では本来2本あるべきところにハート型の歯が
1本だけ生えていて、これが癒合歯です。

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癒合歯があることで乳歯全体の本数は標準より少なくなりますが、その癒合歯の後に生えてくる永久歯の数は2本である場合と、やはり少なく1本の場合があります。
(永久歯も癒合歯というケースもありますが、ごく稀です。)
いずれにしても乳歯の癒合歯から永久歯への生えかわりはスムースにいかないことが多いので、あらかじめX線診査をして永久歯の数や位置を確認しておきます。
生えかわりの時期が来たら、必要があれば乳歯の癒合歯をタイミング良く歯科医院で抜いてもらいましょう。
また、歯ならびの問題が生じることもありますので、歯列矯正も視野に入れた定期的な診査が望まれます。
癒合歯に関して、詳しくは http://angel-dc.com/12-1-02-02.html をご覧ください。
 
一方、乳歯の数が標準であっても、一部の乳歯の下に永久歯が育っていない(もともと存在しない)ことがあります。つまり、乳歯は全てあったのに後継の永久歯の数が1~2本少ないというケースですが、これも比較的よくあるのです。
永久歯がない部分の乳歯は抜けずに長く残っていることが多いので大切に使い、乳歯が失われてしまったらそのスペースを確保する装置を入れることもあります。
将来は歯列矯正、ブリッジ、インプラント等の方法で補うことになります。

・過剰歯
標準より歯の数が多いことがあり、余分な歯を過剰歯(かじょうし)と呼びます。
過剰歯は上の前歯部分の骨の中に1~2本が潜んでいて生えてこないことが多く、その場合は適切な時期に摘出(小さな手術となります)する必要があります。
過剰歯の存在を知らなかったり、放置したままタイミングを逃すと、永久歯の前歯そのものや将来の歯ならびに影響を及ぼしてしまうことがあります。

下の写真は乳歯が抜けないうちに予想外のところから永久歯が生えてきてしまい、X線で調べたところ中央に上向き(逆性)の過剰歯が2本あって生えかわりや歯ならびに大きな問題が生じていました。
もっと早く過剰歯を見つけて摘出しておけば防ぐことができた事態です。

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私の歯科医院では4歳頃に1回だけ(むし歯がなくても)上の前歯部分のX線を撮らせていただくようにしていますが、その最大の目的が過剰歯の発見です。
 4~5歳までに見つけておけば、最適な時期(多くは7~8歳頃)までに抜歯や摘出をおこなうことができ、良くない影響も防ぐことができます。
また、過剰歯は家族性にあらわれることが多いので、お子さんに過剰歯があった保護者の方は、将来お子さんが結婚してお孫さんができたときに、そのことを思い出していただき、お孫さんが4歳頃になったら歯科医院でX線を撮ってもらってください。
 
上記したような歯の数の過不足、特に永久歯に関することはX線の助けを借りなければわからないので、3歳児健診や保育園、小学校の集団歯科健診では検出できません。
今までにむし歯等の指摘を受けたことがないお子さんも、4~5歳までに歯科医院で精密な診査をお受けになることをおすすめします。

乳歯のむし歯(虫歯)治療:低年齢で重度なむし歯(虫歯)の治療例

私の歯科医院は小児歯科専門とはいえ、1~2歳の低年齢で重症のむし歯(虫歯)になってしまった場合には、できればある程度身体が発育し、体力もついてから治療に踏み切りたいと思ってはいます。
通常、それまでの間は進行抑制剤(サホライド)を塗りながら経過をみていきます。

しかし、既に化膿性の炎症を起こしてしまっていたり、歯の原型をとどめないほどに溶けるようにむし歯(虫歯)が進行しているケースでは、放置すれば入院加療の末に抜歯という経過をたどってしまうこともあります。
(低年齢児の重度むし歯(虫歯)の背景については、こちらをご覧ください。http://angel-dc.com/kiji.pdf)

そのような場合には1歳前半でも治療を開始せざるを得ません。
写真のお子さんは初診時には1歳1ヶ月でした。
むし歯(虫歯)が化膿して歯肉が大きく腫れ、その腫れに押されて歯の位置が移動してしまっているほどでした。

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幾多の症例を経験している私にとっても過去にもあまり例がないほど低年齢で重度のむし歯(虫歯)ですが、抜歯せずになんとか治療可能と判断しました。
お子さんもがんばって通院してくださいましたが、保護者の方のお仕事の都合があって良いタイミングで予約が取れなかったこともあり、上の前歯4本の感染根管治療(歯の内部の治療)がなかなか進みませんでした。
炎症も強く、一時期は一進一退となっていたのですがようやく落ち着き、ほとんどのケースで多くても7~8回で完了できるものが、十数回もかかってしまいました。
(乳歯の上前歯の治療手順はこちらをご覧ください。http://angel-dc.com/12-1-01-02.html)

最終的にCRジャケット冠で歯の形を作った時には、お子さんは1歳6ヶ月になっていました。
下は治療後の写真です。

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たしかに重度でしたが、治療開始時の感触から考えるとこれほど苦戦するとは思いませんでした。
感染に対する抵抗力、治療や抗生剤の効果などは人によって差があります。
人工のものですが外観と機能を回復することができ、ご家族も喜んでくださって今は一息ついたところです。
が、むし歯(虫歯)の原因菌の感染状況や生活習慣などいくつかの要素から、このお子さんは今後もむし歯(虫歯)になりやすいと予想されます.。

これから先、新たなむし歯(虫歯)にならないように予防していくのは、ご家族も私たち歯科医師側もかなりの努力が必要なのは確かでしょう。
将来、歯のことで苦労する人生を歩ませないために、これからも定期的に来院していただき、気を引き締めて予防に取り組んでいかなければなりません。

乳幼児の虫歯治療(むし歯治療)の受診先のこと

乳幼児の虫歯治療(むし歯治療)の方法や手順については、この日記でも当院サイトでもご紹介しています。

https://angel-dc.com/12-1-01.html

https://angel-dc.com/12-1-01-03.html

しかし、このような治療を実施しているのは小児歯科専門医などごく一部の歯科医療機関に過ぎません。

先日、週刊朝日の「いい歯医者2011」事務局からアンケートが送付されてきました。
以前に、小児歯科学会の認定専門医として週刊朝日誌上と「Q&Aでわかる いい歯医者」というムックで当院もリストに加えていただいたこととの関連です。
そのアンケートの自由回答欄に私はこんなことを書きました。
「近年、乳幼児のむし歯(虫歯)は全体としては減少・軽症化していますが、一部には(長期の授乳や哺乳瓶使用等の生活習慣を背景として)今でも1~2歳の低年齢で重度むし歯(虫歯)になってしまう例があります。
何軒かの歯科医院を受診しても解決せず、ネット等で当院を探し当てて遠方から来院される患者さんが近年急に増えています。
この現象の背景には、低年齢児のむし歯治療スキルを持った歯科医師が引退などで減少していることや、小児歯科の専門技術を有していても診療の主体を矯正診療やファミリー診療にシフトする例が多くなったためにスキルを有する歯科医院と「小学生などの子どもも診ますよ」という意味で小児歯科を標榜している歯科医院とが判別しにくいこと、などがあるように思います。
少数とはいえ重度むし歯(虫歯)の乳幼児は存在し、今の子育て事情の中では捨て置けない問題と思います。
一方、全体としては特に若手の歯科医師が乳幼児の重度むし歯(虫歯)を研修、経験する機会が減ったためか、医療者側の取り組みレベル、対応力が低下していることに危機感を抱いています。」

事実、この1~2年に当院に来院される新患の中には、1歳代で重度むし歯になっているケースが目立ちます。
むし歯(虫歯)の重症化、低年齢化に拍車がかかったようにさえ思えます。
下の写真は1歳1ヶ月でむし歯(虫歯)から歯肉膿瘍(しにくのうよう=化膿して歯ぐきが腫れた状態)になってしまったケースです。(治療は困難ですが可能です。)

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そして、最近の傾向として特徴的なのは、既に何軒かの歯科医院を受診し、場合によってはなんらかの処置を受けている(とはいえ、問題解決=適切な治療には至っていない)例が多いことでしょう。
こうしたお子さんの保護者の方々は、ネット検索などで受診先を探しに探した結果、当院にたどりつくようです。
中には県外、それも数百キロ離れた遠方からいらっしゃる方や海外から一時帰国して来院される方も・・・。
 
これは一部想像ですが、低年齢で重度むし歯(虫歯)になってしまったお子さんの保護者(当然30代前後の方々が多いでしょう)が受診先を探すとして、日本小児歯科学会の認定専門医制度

http://www.jspd.or.jp/specialist_doctor/index.htm

http://www.jspd.or.jp/authorized_doctor/index.htm

のことや
全国小児歯科開業医会(JSPP)

http://www.jspp.net/cgi-bin/search/index.cgi?search_top

の存在をご存知なかったとすれば、自宅に近くて見やすいホームページがあって「小児歯科」を標榜している、保護者の方々と年代が近い院長の歯科医院を受診することが多いのではないかと思います。
でも考えてみてください。小児のむし歯(虫歯)が全体としては少なくなった1990年代以降に歯科の教育を受け、その後の研修を経た歯科医師は(小児歯科に重点を置いたトレーニングを受けた方を除いて)3歳未満の重度むし歯(虫歯)のお子さんを1回も診察したことがない可能性すらあります。

地域の歯科医師会の会員であれば、小児に限らず自分の守備範囲を超えている患者さんはしかるべき受診先を紹介するのが普通です。
しかし、会員でない場合は地域の専門医との連携が薄いため、なんとか自力で対処しようとする傾向もあるかもしれません。
歯科医院経営への影響を考えると「対応できない」とは言いにくい事情もあるでしょう。
一所懸命になんとかしようとするとしても、限界点が高くないこともあり得ます。

スポーツではベストを尽くせば試合に負けても評価されますが、医療においては結果も重要なのは申し上げるまでもありません。

既にむし歯(虫歯)から化膿性の炎症に移行し、歯ぐきが膿んでいる1歳児に対し、「歯みがきをがんばりましょう」という指導のみ、ということさえあるようです。
これは、足を骨折して苦しんでいる人に積極的な治療をせずに「一歩ずつ歩いてみましょう」と言っているのと同じです。

日本では、標榜(看板を掲げること)や広告に制限があることもあって、一般の方々が医療機関の専門性を見分けるのが困難な面があります。
そのような法的状況下にあって、小児歯科に限らないことですが専門のスキルを有しないのに図らずも受診先となった医療機関を責めることは必ずしも妥当ではありません。
また、近年は諸般の事情で歯科医師会への入会率も低下していることも関連し、他の医療機関との連携を期待できない歯科医院が増えている様子なのも残念です。

ネットが発達した昨今とはいえ、低年齢児のむし歯(虫歯)治療に関する情報が、なかなか必要としている方々に届かず、解決に至るまでにあちこち受診を繰り返すという状況はなんとかならないものかと思います。

乳歯の治療 特にあかちゃんのむし歯(赤ちゃんの虫歯)治療

あかちゃんというのは生後どのくらいまでを言うのか、はっきりした定義はないようです。
むし歯(虫歯)の原因菌が生後まもないあかちゃんの口の中には存在せず、歯が生えた後に保育者の口の中から移り住んでくることは、最近ではよく知られるようになりました。
そして、母乳と粉ミルクにかかわらず、授乳が長引いたお子さん、特に夜間の長時間授乳の習慣のあるお子さんの中には、まだ「あかちゃん」と言える満1歳頃からむし歯(虫歯)が始まるケースがあります。

こうしたお子さんの場合、1歳6ヶ月にもなると、むし歯がかなり進行し、歯の形が崩れてくることも少なくありません。
このような急速に進行する低年齢児の重度のむし歯(虫歯)(Early Childhood Caries(E.C.C)と近年呼ばれるようになりました)がなぜ起きるのかについては、様々な研究がなされていますが、明確な結論は出ていないようです。
母乳や、母乳に近い成分で作られている粉ミルク(人工乳)に直接の原因があるならば、それぞれの種の母乳で育っている子ザルや子犬、子ウサギもむし歯(虫歯)になるはずですが、実際にはヒト(人間)だけに見られる現象のようです。
離乳食等に含まれる砂糖が関与すると考えられていますが、乳糖が原因とする研究者もいます。

このあたりの考察はhttps://angel-dc.com/kiji.pdf を参照いただくとして、授乳習慣が関連していることはまちがいないと思います。
また、極めて個人差が大きく、低年齢でむし歯(虫歯)が重症化してしまうお子さんは比率としてはわずかです。
厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドでは1歳6ヶ月頃までの授乳継続を容認した内容となっていて、これは大多数のお子さんにとっては問題がないのですが、1歳前後からむし歯(虫歯)が進行したお子さんは早めの卒乳が望まれます。
授乳習慣が背景にあるむし歯(虫歯)の特徴を私の経験から列挙してみると・・・

・満1歳前後の低年齢でも発症する。むし歯(虫歯)は急速に進行し、深刻化するのは1歳6ヶ月前後が多い。
・むし歯(虫歯)になるのは、上の前歯の主に裏側(口蓋側)が中心で、それに加えて上下の第一乳臼歯(奥歯)にも見られる。
・下の歯、特に前歯はこの時点でむし歯(虫歯)になることは少ない。
・左上の歯と右上の歯を比べると、むし歯(虫歯)の重症度に差があることが多い。
・長時間うとうとしながらの母乳あるいは哺乳びんによる授乳の習慣が今も続いているか、最近まで続いていた。

乳幼児のむし歯(虫歯)はいわゆる放漫な育児や、不規則な食生活によっても起こりますが、2歳前に発症する上記のような特徴を持ったむし歯(虫歯)の場合は、ごく標準的な子育てをしている普通のご家庭のお子さん、母乳育児のもとでじゅうぶんな愛情を注がれ、ケアを受けているお子さんにも起こります。
そのため、子育てに関してアバウトではなくむしろ高い意識を持ったご家庭の場合には、保護者の方々特にお母さんは、ご自分を責めたり傷ついたりしがちです。
中には、1歳6か月児健診などで健診担当の歯科医師やスタッフから授乳や食生活について厳しいことを言われたりして落ち込んでしまった、などというケースもあります。

さらには、具体的な対応や治療についての情報量が乏しく、何軒もの歯科医院に相談に行く方も少なくありません。私の歯科医院にたどりついたときには、かなり疲弊してしまっているご両親もいます。
まだ「あかちゃん」と言えるような年齢でむし歯(虫歯)になってしまったお子さんの保護者の方は、ぜひ小児歯科の専門医を受診してください。
専門医のリストは日本小児歯科学会のサイトhttp://www.jspd.or.jp/や、JSPP(全国小児歯科開業医会)のサイト

http://www.jspp.net/にあります。

治療方針は歯科医院によって違いますが、お子さんの年齢やむし歯の重症度等を総合的に考え、進行抑制剤(サホライド)(サホライドについてはhttp://angel-dc.at.webry.info/200902/article_1.html もお読みください。)を使用したりしながら、経過を見ていって、ある時点で積極的な治療に踏み切るという考え方の専門医が多いと思います。

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上の写真は、1歳前半の重症むし歯(虫歯)をサホライドでコントロールした状態。
下の写真は、上の写真のお子さんを1歳後半で治療した後です。

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低年齢で重度のむし歯(虫歯)になるお子さんは、比率としては少なく身近にもいないかもしれませんが、全国的に見れば相当数の方々が同じ悩みを持っています。解決策はありますから、力を落とさずに多少遠方であっても小児歯科専門医に相談してみてください。

子どものむし歯(虫歯)治療の将来に不安

子どものむし歯(虫歯)は、1960~70年代には非常に多く、「むし歯(虫歯)の洪水」と呼ばれて社会問題になっていました。しかし、その後は減少の一途をたどり、最近では、各種の歯科健診などで、重度のむし歯(虫歯)のお子さんに出会う機会はたしかに少なくなりました。

しかし、今でも低年齢なのに深刻なむし歯(虫歯)になってしまって困っている親子も全国的な視点で見れば、まだまだ多いのです。当院にはそんな方々が遠方からも来院されます。また、メール等で相談をいただいた場合にはJSPP(全国小児歯科開業医会)のホームページhttp://www.jspp.net/から少しでも近くの専門医をご紹介したりしています。

ところで、医療制度改革や不況の影響で、歯科医師もワーキングプアの仲間入りをするほど歯科医院経営は厳しい時代を迎えています。そんな中で最近開業した歯科医師の大多数は、できるだけ幅広い年齢層の患者さんの来院を期待して「小児歯科」も標榜(ひょうぼう=看板に掲げること)しています。そういう歯科医師は、開業前に高齢者から小児までひととおりの診療経験を積んでいるはずです。しかし、一地域における乳幼児のむし歯(虫歯)は減ってきたのですから、低年齢で重度のむし歯(虫歯)になってしまったお子さんの治療経験は、ほとんどないのがむしろ普通ではないでしょうか。

重度のむし歯になってしまった乳幼児が受診した場合、もちろん、できるだけの対応はしようとするのでしょうが、実際にはサホライドすら塗らないで「歯みがきとフッ素塗布でがんばって、もう少し大きくなったら治療しましょう」というような中途半端な経過観察が続いてしまう例もあります。
(サホライドについてはhttps://angel-dc.at.webry.info/200902/article_1.htmlをお読みください。)

そうこうしているうちに、お子さんのむし歯(虫歯)は進行してしまい、いよいよ切羽詰った保護者の方がネット等で必死で受診先を探している様子が、当院にいただく相談メール等からもうかがえます。そもそも、小児歯科を標榜している歯科医院と、専門性の高い小児歯科診療を実践している歯科医院の区別が曖昧なことにも問題があるかもしれません。

また、小児歯科診療の研鑽を積んだ歯科医師でも、近年では小児歯科専門で開業することは少なく、家族全員を診療するファミリーデンティストとなったり、歯列矯正に力点を移したりする傾向にあります。そのため、患者さん側から見たときの専門性の程度がわかりにくくなってもいます。
(過去の記事「小児歯科ってなに?その3」https://angel-dc.at.webry.info/200701/article_4.htmlもご参考ください。)

「むし歯(虫歯)の洪水」の時代に第一線で活躍し、高度な小児歯科診療技術を持った歯科医師もそろそろ壮年期にさしかかっています。その技術を受け継いだ私たちも決して若くはありません。

つい先日、週刊朝日に掲載された「小児歯科の「いい歯医者」-失敗しない歯科医の選び方 小児歯科」という記事に、うれしいことに当院も掲載されていましたが、データにあった各歯科医師の卒業年度を見ると、予想どおり私などは若手の方に属するくらいでした。

重度のむし歯(虫歯)のお子さんを確実に治療することのできる歯科医院は、今後ますます減るでしょう。
現状のままでは、周囲にはむし歯(虫歯)で苦しむ親子が少ない中で、乳幼児期にむし歯(虫歯)になってしまったお子さんの保護者の方は、情報も少なく、的確な治療を受けられないまま心理的にも追いつめられてしまいます。

こうした方々が行き場を失わないように、小児歯科の診療技術を次世代に伝えていく努力をしなければいけないなと思う今日この頃です。

上唇小帯

上唇小帯(じょうしんしょうたい)とは、上の前歯の上の方、中央部にある「すじ」のことです。
大人にも子どもにもあるのですが、乳幼児期、特に2歳以前にはこの上唇小帯が太くて目立ち、上の前歯の真ん中に割って入るように発達している場合が多いのです。この状態を上唇小帯の低位付着などと呼びます。

http://angel-dc.com/12-2-02.html もご覧ください。

上唇小帯は成長と共に徐々に細くなり、付着位置も変化していきます。
最近では経年的な変化を追った研究報告もなされています。
稀には、小学生頃になってもあまり変わらないケースもあって、その場合は上の前歯の中央部の歯の間に隙間が残ってしまったりするために簡単な切除手術の適応となります。
多くの場合は、切除するとしても小学校入学以降の年齢になってからです。

下の写真は2歳児ですが、これで全く正常です。もちろんこの年齢で上唇小帯が発達していないお子さんもいます。

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しかし、成人の上唇小帯を見慣れていると、写真のように太い乳幼児期の上唇小帯が異常に思えるために、その年齢では正常であるにもかかわらず「切除が必要」と判断してしまう歯科医師が一部にいます。
1歳6ヶ月児健診などで歯科医師が指摘してしまい、保護者を悩ませるというケースが後を絶ちません。
大学歯学部の小児歯科の教育の中でもあまり強調されていないために、少なからぬ歯科医師が乳幼児期の上唇小帯は太くても異常ではない、という事実を知らないことも一因と思われます。
乳幼児健診関連の出版物も増え、私も以前に神奈川県歯科医師会員向けの月報にも書かせていただいたりしましたし、徐々に状況は是正されてはいるはずなのですが・・・。

先日も、1歳4ヶ月のお子さんをお連れになった方が少し遠方の地域から相談にみえました。
お子さんが上の前歯付近を気にする様子があったので近くの歯科医院を受診したところ、歯科医師に「上唇小帯が太いので切ったほうが良い。まだ小さいので処置に慣れさせる目的で切除する前に何度か通院してください。」と言われたとのこと。
私がそのお子さんのお口の中を拝見したところ、たしかに上唇小帯は太いタイプですが問題はありませんでした。そして、上前歯付近の歯肉が赤く腫れていました。最近発熱があったとのこと。ヘルペス性歯肉口内炎と診断しました。これについては↓をご参照ください。

https://angel-dc.com/12-2-03.html

病状がピークを過ぎて治癒してきている様子でしたので、投薬はせず、患部の洗浄のみおこなって帰宅していただきました。

さて、あまり同業者をとやかく言いたくはないのですが、この親子が最初に受診した歯科医師は3つの誤解をしています。
1)1歳のお子さんが口の中を気にする様子があるというのはよほどのことですが、ヘルペス性歯肉口内炎による痛みや違和感を訴えていたわけです。これは上唇小帯の形態とは無関係であるのに、そうは考えなかったこと。
2)上唇小帯が太いことはこの年齢では正常であるのに、切除が必要と考えたこと。
3)1歳4ヶ月児が何回か通院して歯科医師になついたとしても、歯科処置の際に動かずにおとなしくしていることは不可能である、ということが判断できなかったこと。
1歳児が何度か通院したとしても、全く医療収入にはつながりませんから、おそらくは全て善意のもとで発言されたことなのだとは思います。

永久歯が生える前のお子さんについては、ほとんどの場合上唇小帯の切除は必要がなく、経過をみるだけで良いということを子育て中のみなさんにも知っておいていただければ幸いです。

見えにくいむし歯(虫歯)と咬翼法X線

「幼稚園・保育園や学校の歯科健診ではむし歯(虫歯)なしと言われたのに、歯科医院ではむし歯(虫歯)と言われた。」
よくある話です。
では、なぜこのような矛盾が起こるのでしょうか。
それをご理解いただくために、今回は集団健診と個別健診の違いについて書きたいと思います。

集団健診はあくまでも精査を必要とする人を見つけ出すという目的でおこなわれるものです。これを「スクリーニング」と言います。
3歳児健診、幼稚園・保育園の歯科健診、学校健診などは全てこのスクリーニングに該当します。集団健診は正確な診断を得る場ではなく、医療機関に行って精密な検査や正確な診断をしてもらった方が良いと思われる人をふるい分けるシステムです。

たとえば、聴診器ひとつで胃潰瘍が発見できないということは、どなたにも理解しやすいと思います。その一方、熟練した医師が受診者の胸に聴診器を当てるだけで、心音や呼吸音の異常を聴き分け、病気の存在を示唆することが可能である、ということもわかりやすいと思います。内科などの場合には、「集団の健康診断で全てがわかるわけではないが、病気の手がかりが見つかったら病院に行って診てもらうべき。」ということは多くの方が認識しています。
しかし、歯科の場合はどうでしょう?暗くて狭い口の中のこととはいえ、むし歯(虫歯)等の病気は集団健診で歯科医師が見れば判定できると思っていませんか?
特に3歳児健診などは、保護者の目の前でお子さんの口の中を歯科医師が診査するわけですから、「むし歯(虫歯)はない」と言われれば100%ないと思ってしまうのは無理もないかもしれません。
ここに落とし穴があります。歯と歯の間、中でも奥歯の間は、目で見る診査(視診)ではどんなによく見ても見えない部分があります。

歯の間の見えにくいむし歯(虫歯)を見つけるためには、X線の助けが必要です。特に咬翼法(バイトウイング法)というテクニックで真横から撮影すると、目での診査では見つけられなかった奥歯の間のむし歯(虫歯)が写りこんできます。ですから、私自身が自分の担当する保育園や小学校で「むし歯(虫歯)が2本」と判定したお子さんが来院し、X線診査をすると、「むし歯(虫歯)が8本」という診断になるようなことが、しばしば起こります。
また、多くの場合、集団健診での診査環境は、ライトも暗くて見えにくく、歯を乾燥させるエアーシリンジもないので診療所の環境とは大きく違います。歯科医院では、エアーや器具を併用してシビアな目でしっかり診査しますから、保護者の方が「むし歯(虫歯)はないはず」と思っていてもむし歯(虫歯)が見つかることがあります。X線診査を別にしても、歯科医院での個別健診では、集団健診やご家庭での観察ではわからないことがいろいろとわかるのです。
それでは、集団健診は意味がないのでしょうか?そんなことはありません。上記した聴診器の例でもおわかりのように、集団健診でわかることも、またたくさんあるのです。

しかし、もしも歯科で正確な診査を受けたいとお思いになるなら、集団健診に頼らずに、学校や幼稚園・保育園の歯科健診の結果とは関係なく定期的な診査を歯科医院で受けていくことが必要になります。

下のX線写真は、幼稚園の健診では「むし歯(虫歯)なし」と判定されたお子さんですが、X線診査(咬翼法)で奥歯の間に歯髄に達するC3と分類される深いむし歯(虫歯)を含め、10本ものむし歯(虫歯)が見つかってしまいました。矢印部分にむし歯(虫歯)があります。こんなに深いむし歯(虫歯)であっても、集団健診をくぐり抜けてしまうこともあるのです。

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また、咬翼法X線は、新たなむし歯(虫歯)の検出だけでなく、以前に受けた治療に問題が起きていないか、治療が成功しているかどうかを判定する材料になります。

下のX線写真は、定期診査にいらした中学生のものです。歯の間のむし歯(虫歯)が疑われたのですが、幸い治療を要する箇所はありませんでした。白っぽく写っているのが、以前に治療した際に充填した歯科材料ですが、天然の歯質と人工材料が段差もなく移行的になっているのが確認できます。このX線で見る限りでは、以前の治療もきれいに仕上がっていて、問題がないことがわかります。

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当院に定期的に来てくださるお子さんの中には、むし歯(虫歯)のリスクが高くて毎回のように小さなむし歯(虫歯)が見つかってしまうケースもあります。以前にしっかり治療してあれば、定期診査で見つかるむし歯(虫歯)の多くは簡単な治療で済むのですが、「またむし歯(虫歯)と言われたけれど本当かしら?」と思われる保護者もいらっしゃるかもしれません。でも本当であることは、今までの説明でおわかりいただけたかと思います。
その一方、1~2歳でたくさんのむし歯(虫歯)治療をしたお子さんの保護者の方の中には、すばらしく努力をされ、その後は1本も再治療していないというケースも少なくありません。

保護者の方々にとっての、そして私たち小児歯科の歯科医師や医療スタッフにとっての最終的な目標は、乳歯にむし歯(虫歯)があったお子さんでも永久歯は予防に成功し、歯のことで悩まない人生を送れるようにしてあげることです。
そのためには、集団健診と個別健診の違いを理解しつつ、両者を上手に活用していくのが良い方法だと言えるでしょう。