2018年02月19日
小児歯科とラバーダム 続編
2020年5月25日追記
新型コロナウイルス等のウイルスや細菌の感染防止にラバーダムの使用は極めて有効で各学会や歯科医師会も推奨しています。
ラバーダムを使用しなければ口の外へ飛散してしまう飛沫はラバーダムにより90%以上減少するというデータがあります。
また、ラバーダムを常時使用するために多くの歯科医院で診療チェアの横に設置されているスピットン(うがい設備)が当院には不要なため存在せず、ブクブクうがいで唾液が吐き出されて飛び散ることもありません。
小児歯科専門医院ならではの最強の感染予防システムのもとで診療しております。
以下は2018年2月18日投稿の本文記事です。
小児歯科の医療事故に関連した報道の中で「ラバーダム」に否定的な見解を示した歯科医師がいたことから、日本小児歯科学会がコメントを出しました。
写真がラバーダムを装着した状態です。
ラバーダムについては、このブログの過去記事「小児歯科とラバーダム」もご参照ください。
申し上げるまでもなく、ラバーダムは正しく使用すれば呼吸を抑制することもなく、歯科治療・処置の精度を向上させ、安全性も高めるものです。
(ラテックスアレルギーには注意する必要があり、非ラテックスの製品もあります。)
ラバーダムの使用によって治療成績は明らかに上がります。
しかし、残念ながら日本では日常的に診療に取り入れている歯科医師は少ないようです。
他の歯科医師から「小児の修復物がよく脱落する」「一度感染根管治療(歯の内部の治療)をしても、再び炎症で歯肉が腫れてしまう」ということを相談されることがあります。
ラバーダムを使用すれば修復物は脱落しにくいし、感染根管治療ではむしろ厳しい炎症でも治癒する、ということをお話ししますが、ラバーダムを使用しない歯科医師にはにわかには信じられないようです。
ラバーダムは小児歯科の専売特許のように思われがちですが、昨年2017年に出版された「治療効率がUP!良好な予後につながるラバーダム法」及び10年ほど前に出版された「写真でわかるラバーダム防湿法」の著者の方々は小児歯科医ではなく、保存修復、歯内療法という分野や細菌学に詳しい歯科医師です。
これらの書籍を読み進めると、私が日々の診療の中で感じている、ラバーダムは唾液に含まれる細菌が、治療している歯に侵入するのをシャットアウトすることや、ハイレベルな防湿により乾燥状態を作り修復物の接着性を格段に向上させることなどが論理的に説明されています。
もちろん、ラバーダムには器具の誤嚥を防いだり、高速回転する切削機械や刺激の強い薬液から口腔粘膜を保護するという役目もありますが、上記した感染対策がラバーダムの主目的であると昨年出版の上記一冊目の著者の一人は書いています。
ラバーダムは簡易的な手術室であるという主旨の記載も二冊目にあり、全く同感です。
成人、小児に限らず、治療部位が見えるようになり、ラバーダムなしで唾液まみれの中で治療をするよりもはるかに効率が良く、予後も良好です。
特に小児の場合にはラバーダムの使用により治療も楽に受けられるようになるので、他の歯科医院では治療に協力できなかったお子さんが当院では動かずに治療ができる理由の一つでもあります。
一部のお子さんはラバーダムが嫌だと保護者に訴えるので、よくご説明し、資料もお渡ししています。
保険診療においてラバーダムには以前にわずかながら診療報酬がついていましたが、今はゼロです。理由はわかりません。
ラバーダムを使っても使わなくても歯科医師が得るお金は同じということです。使用すればコストはかかるので、ラバーダム法は使用する歯科医師の意欲や情熱にのみ支えられているということです。
この視点を一つとっても、使用する歯科医師がまじめに診療に取り組んでいることがおわかりいただけると思います。
下の動画は当院で低年齢児の虫歯(むし歯)治療をラバーダム防湿のもとで実施している様子です。
私は歯科医師になってすぐに師匠からラバーダムテクニックを教わり、身につけることができて本当に良かったと思っています。