2013年01月12日
口腔外傷を含む小児の緊急処置について
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
1月10日にテレビで都立小児総合医療センターにおける小児ERの診療についての報道がありました。
同センターでは、受診するお子さんの緊急度をトリアージ室で判断し、重症なお子さんを優先的に診療する体制ができていました。
また、生命の危険がある場合のドクターカーの出動の様子や、食事量が少なく育児放棄の可能性があるケースへの対応、外来局所麻酔下での泣く子への頭部皮膚縫合処置の実例などが紹介されていました。
センターのホームページを見ると、歯科の分野である小児歯科、矯正歯科を含めた数多くの診療科が開設されています。
このような医療機関が近くにあれば、保護者の方々も私たち医療者も心強いのですが、ここ平塚市からは距離があります。県内には県立こども医療センターもありますが、残念ながらこちらも遠方です。
平塚市周辺では、小児科の開業医の先生方や、いくつかの大学病院、総合病院の救急外来、口腔外科を含む外科系の診療科などが小児の救急診療を担っています。
歯や口腔の外傷については、診療時間内であれば当院を受診するケースもあります。
しかし、小児に対する総合的な医療サービスの実施や、疾患の種類・病態に応じた受診科の選択などに関する視点から見ると、医療機関同士の連携も少なく、診療時間の制約や診療科それぞれの守備範囲の問題等、地域としては課題があるように思います。
内科系の病気であれば小児科ですが、外傷の縫合処置などは小児であっても成人と同じ外科系の診療科で主に実施されていると思われます。
いくつかの診療科にまたがる状況(たとえば頭部打撲や顔面裂創もあり、歯も抜けたり折れているなど)では脳外科、形成外科、小児歯科・口腔外科の対応となるでしょうが、二つ目以降の診療科受診は翌日に持ち越されがちです。(状況的な優先順位にかかわらず、保護者が考えた順序での受診となることが多く、その間に医療的なアドバイスをする人も少ないしシステムもありません。)
小児には成人とは異なる医療が必要な面もありますし、上記した医療センターのような小児に特化した総合医療機関がもしあれば、各科連携のもとに連続した専門診療が受けられるでしょうから少しうらやましいですね。
また、この地域では、受診先をどこにするかは保護者の判断や、問い合わせた先の担当者の判断にゆだねられますが、救急車の要請を含めて、疾患・病態に合致した医療機関、診療科に行きつくとは限りません。
先日、外傷のため当院で口の中を縫合したお子さんは、保護者がいくつもの医療機関や公的機関に問い合わせた末に当院受診に至りました。
受傷の程度は軽いものではありませんでしたが、傷は主として口の中で、顔面の傷は軽度だったので顔面皮膚の縫合は不要だったのが不幸中の幸いでしたが、将来に傷跡を残さないような皮膚の縫合は、私の技術や常備してある器具の守備範囲を超えています。
もし顔の傷がもっと深ければ形成外科受診も必要だったところでした。
下の写真は受傷後10日ほど経って傷も治癒してきた頃のものです。
お子さんが急な病気や怪我に見舞われたとき、保護者の方は気が動転している中で、できる限り正確な状況を電話で伝えるしかありません。私の経験では、状況を過小評価する方もいらっしゃれば、逆に小事を大事と受け止めてしまう方もいます。
総合的な小児医療機関がない地域では、受診先の振り分けやトリアージの機能を有する小児救急医療に関する相談窓口の開設が必要なのではないかなという思いが、冒頭に記したテレビ番組を見て深くなりました。