2012年09月04日
歯科医師会未入会の歯科医師の方々へ
数か月前のこと。
ある歯科医師から電話があり、治療の際に泣いてあばれてしまってその歯科医院では対応できないお子さんの診療を依頼されました。
もちろん、私としては大歓迎でご予約を入れさせていただきました。
このように他の歯科医院からの紹介で来院される方は多いのですが、特筆すべきはその歯科医師が歯科医師会の会員でない診療所の勤務医で、面識のない方だったことです。
電話をしてくるのにも多少の勇気が必要だったのではないかと察しますが、もし同じような立場の方がこの拙文を読んでいただいているなら、ご遠慮なくご紹介いただきたいと思います。
後述しますが、歯科医師会に未入会の診療所やそこに勤務する歯科医師は、地域における医療ネットワークから外れてしまっています。
そのため、守備範囲を超えてしまっているケースであっても、どこへも紹介せずに自院でなんとか対応しようとしてしまう傾向にあるようです。
歯科医師会員であれば、会に所属する口腔外科、矯正歯科、小児歯科等の専門医は顔見知りであり、自院の患者さんの診療を(場合によっては部分的に)依頼することに大きな抵抗はないでしょうし、もっと細かく、歯周病ならどの会員が専門研修歴があって詳しいとか、インプラントの難しいケースなら誰に相談すると良いとか、摂食嚥下の問題ならあの会員とかというような情報が日ごろの交流の中で共有できています。
紹介や依頼が結果として患者さんにとってもベストな選択となり得ます。
ちなみに平塚市休日急患・障がい者歯科診療所は、市の委託のもとに歯科医師会が運営していますし、3歳児健診等の公的な歯科健診は歯科医師会員が担当しており、学校歯科医も歯科医師会員の中から選定されています。
最近では、妊産婦歯科健診、口腔がん健診も実施され、地域の病院と連携しながらの摂食嚥下のサポートやがんの手術前後の患者さんの口の中のフォローを歯科医師会員がおこなう体制作りも進んでいます。
このように、歯科医師会は同業者の親睦団体でもありますが、地域医療連携にも役立っているし、地域保健の一翼を担ってもいます。
ところが近年、歯科医院を開業する歯科医師の大多数は、歯科医師会に入会しません。
その理由を簡単に書くとすれば、入会することにより昔は種々のメリットがあったのですが今はあまりない上に、厳しくなった経営環境の中で入会金や年会費の負担が大きいからだと思います。
歯科医師会に身を置いて20年以上経った私としては、上記した連携のこと以外にも種々の事業に参加することにより社会貢献ができたり、講演会、セミナー等に出席することで自己啓発や勉強の機会が多い等の会員としてのメリットはあると感じてはいます。
しかし、事業や委員会に出席するために診療時間を削らなければならないこともあり、開業して日が浅い方々にしてみればそれもマイナス要因となるでしょう。
大規模な診療所で院長先生ご自身が未入会の場合には、そこに勤務する歯科医師も地域の歯科医師会とは縁がありません。
将来勤務医を辞めて開業するとしても、勤務先だった診療所と同じ地域で開業する可能性は低いでしょうから、地域の歯科医師会とつながりを持つ必要性はないでしょう。
しかし、同じ地域で歯科医療に携わる者としては、今後も増加していくであろう未入会の診療所開設者や、勤務医の方々との連携や交流も考えていかなければならない時期に来ているように思います。
そうしていくことが、結局は地域や個々の患者さんたちにとってプラスになるように感じます。
私の専門とする小児歯科の分野で言えば、低年齢の重度むし歯(虫歯)や外傷、育児困難やネグレクト等の緊急性や社会性の高いことをテーマとした研修会などには、会員であるか否かの区別なく参加できるよう歯科医師会が門戸を開く必要もあるのではないかな、と感じます。
一度でも顔を合わせれば、情報交換のきっかけになるし、未入会診療所から会員専門医への紹介や依頼もしやすくなるでしょう。
患者さん側にとっても、先の見えない通院が続く事態を改善できることにつながるはずです。
そんなことを思う今日この頃です。