2011年07月10日
乳幼児のむし歯(虫歯)治療の実際 その1
乳歯のむし歯(虫歯)治療、特に低年齢の乳幼児のむし歯(虫歯)治療の手順について、他の歯科医師に向けたセミナー的なことをする機会がときどきあるので、最近プレゼン用資料を作ったりもしてみました。
私たち歯科医師が籍を置いた大学歯学部の教育の中では、たとえば低年齢児の重度のむし歯(虫歯)治療について具体的な実技まではほとんど学ぶことができません。
卒業後にも専門が小児歯科とは遠い分野だったりして研修する機会がなければ、歯科医師によってはこうした治療法の存在さえ知らないということさえあります。
なので、私にも道案内役の声がかかるというわけです。
当院サイト内でも既に一部掲載していますが、一般の方々がご覧になっても差し支えない範囲でこのブログでも治療の手順を簡単にご説明したいと思います。
なお、この方法は私が恩師から学んだもので、私なりの多少のモディファイはあっても、スタンダードな術式です。
実施している歯科医院の数は少ないと思いますが、当院独自のスタイルということでは全くなく、健康保険の範囲内で受けられる治療です。
乳歯の前歯の重度の虫歯(むし歯)の治療法を例として順番にご紹介します。
一部に専門的な画像を含みますので、ここから先の閲覧はその点をじゅうぶんにご承知おきください。
ダイレクトな画像を見たくない方はご遠慮ください。
まず前提として当院の場合は、治療中は保護者の方は待合室でお待ちいただき、お子さんと歯科医師とスタッフとで診療環境を作ります。
保護者の前で治療をおこなう歯科医院も多いと思いますが、当院では分離スタイルです。(これには理由がありますし、専門家にも一般の方々にも賛否があると思いますが、その話は別の機会としましょう。)
それから、当院の診療用ユニット(治療用の椅子)にはスピットンという「うがい」のための設備がありません。
治療の途中で起き上がってコップでブクブクうがいをすることがなく、唾液や切削器具から出る水は、後で述べる「ラバーダム」を使用しながら全てバキュームで吸引します。
以下は治療の手順です。
1)局所麻酔
使用する局所麻酔薬や器具は成人の場合と同じですが、小児では骨の構造が成人より緻密でないために、表面麻酔薬を塗った粘膜の下に軽く注射針を入れて、風船を膨らませるような方法を取るため、痛みは少なく時間も数秒間で済みます。
3歳以上で、ある程度理解力があるお子さんの場合は、痛みが少ないということが、次回以降の診療でお子さんの協力を引き出すことに大きく影響しますので、ごく浅いむし歯(虫歯)以外は局所麻酔を使用して治療します。
この写真は以下に掲載するのとは違う症例で、局所麻酔の様子のみのご参考としてください。
2)ラバーダム装着
ラバーダムというゴム製のシートを装着し、処置する歯を隔離します。
この写真もこれからご説明するケースのものではありません。
ラバーダムがしっかり装着できるかどうかが、治療が成功するか否かのキーポイントになります。
ラバーダムを使用することで治療する部分への唾液の侵入を防ぎ、修復材料が確実な接着効果を得られます。
また、高速回転する器具や、刺激の強い治療用薬剤からお子さんの粘膜を守るためにも必要で、口の中から喉に物が落ちることもありません。
ラバーダムを使いこなすことのできる歯科医師は、一度治療した歯のコンポジットレジン修復(歯と同色のプラスティックの材料)がたびたび脱落してしまうという経験をしないで済む世界に住んでいます。
乳幼児のむし歯(虫歯)治療の実際(その2)↓に続きます。
https://angel-dc.at.webry.info/201107/article_2.html