2010年11月27日
乳歯のむし歯(虫歯)治療:低年齢で重度なむし歯(虫歯)の治療例
私の歯科医院は小児歯科専門とはいえ、1~2歳の低年齢で重症のむし歯(虫歯)になってしまった場合には、できればある程度身体が発育し、体力もついてから治療に踏み切りたいと思ってはいます。
通常、それまでの間は進行抑制剤(サホライド)を塗りながら経過をみていきます。
しかし、既に化膿性の炎症を起こしてしまっていたり、歯の原型をとどめないほどに溶けるようにむし歯(虫歯)が進行しているケースでは、放置すれば入院加療の末に抜歯という経過をたどってしまうこともあります。
(低年齢児の重度むし歯(虫歯)の背景については、こちらをご覧ください。http://angel-dc.com/kiji.pdf)
そのような場合には1歳前半でも治療を開始せざるを得ません。
写真のお子さんは初診時には1歳1ヶ月でした。
むし歯(虫歯)が化膿して歯肉が大きく腫れ、その腫れに押されて歯の位置が移動してしまっているほどでした。
幾多の症例を経験している私にとっても過去にもあまり例がないほど低年齢で重度のむし歯(虫歯)ですが、抜歯せずになんとか治療可能と判断しました。
お子さんもがんばって通院してくださいましたが、保護者の方のお仕事の都合があって良いタイミングで予約が取れなかったこともあり、上の前歯4本の感染根管治療(歯の内部の治療)がなかなか進みませんでした。
炎症も強く、一時期は一進一退となっていたのですがようやく落ち着き、ほとんどのケースで多くても7~8回で完了できるものが、十数回もかかってしまいました。
(乳歯の上前歯の治療手順はこちらをご覧ください。http://angel-dc.com/12-1-01-02.html)
最終的にCRジャケット冠で歯の形を作った時には、お子さんは1歳6ヶ月になっていました。
下は治療後の写真です。
たしかに重度でしたが、治療開始時の感触から考えるとこれほど苦戦するとは思いませんでした。
感染に対する抵抗力、治療や抗生剤の効果などは人によって差があります。
人工のものですが外観と機能を回復することができ、ご家族も喜んでくださって今は一息ついたところです。
が、むし歯(虫歯)の原因菌の感染状況や生活習慣などいくつかの要素から、このお子さんは今後もむし歯(虫歯)になりやすいと予想されます.。
これから先、新たなむし歯(虫歯)にならないように予防していくのは、ご家族も私たち歯科医師側もかなりの努力が必要なのは確かでしょう。
将来、歯のことで苦労する人生を歩ませないために、これからも定期的に来院していただき、気を引き締めて予防に取り組んでいかなければなりません。