2007年02月03日
ストローが歯にはまる!?
これは2007年に書いたものですが、残念なことに2019年にも下記と同様な状況のお子さんに遭遇し、「ストローが歯にはまる事故を知ってください」として再び記事と動画をアップしていますのでそちらもお読みいただければ幸いです。
先日、園医をしている保育園に歯科健診に行ったときのこと。園児さんの中の4歳の女の子の下の前歯に、透明なストローのようなものがすっぽりとはまりこんでしまっているのを見つけました。
その場では除去できなかったので、後日に来院していただきました。X線写真を撮ると、かなり長い期間にわたって歯に異物がはまりこんでしまっていたために、ちょうど大人の進行した歯周病のように歯を支える骨が失われている状態でした。
実は、こうしたケースはそれほど珍しいわけではありません。私にとっても7例目くらいになります。
小さいお子さんは日常生活の中で様々な物を口に入れて遊んだりします。たまたま筒状の物で、上あるいは下の前歯の直径にぴったり合う大きさのであると、それが歯にはまりこんでしまうことがあるのです。これらの異物は、元々短い円筒状の物のこともありますが、ストローなどでは、余分な?長い部分がかみちぎられてしまうことも多く、透明な物の場合にはご家族が気づかずに何年も経ってしまうことがあります。その結果、深刻な外傷の状態となり、歯周組織が破壊され、最悪の場合は歯を失うことにもなります。
こんなことがおそらく日本だけでなく世界中で頻発しているはずなのですが、ほとんど知られていないようです。私も10年以上前に最初の例に遭遇した時は「特殊な偶然的なできごと」と考えていました。しかし、その後小児歯科学会で報告例があり、さらには東京の佐々木洋先生(杉並区のUTAKA DENTAL OFFICE 佐々木歯科)が中心となって実態調査を開始し、こうした事故の防止を呼びかける活動を展開しています。その調査によれば異物の種類は様々で、ストロー、音の出るクラッカーの部品の一部などがあるそうです。私が経験したケースでは、パイプ枕の中のパイプやアイロンビーズと呼ばれる装飾工作に使う物などがありました。
お子さんの前歯の外見がおかしいと感じたり、生えかわり期でないのにグラグラしているなどの症状があるときは、このような異物のはまりこみによる外傷も考えられます。
なんだか信じられないような話ですが、深刻な事態になってしまうこともありますので、保護者の皆さんや幼稚園、保育園スタッフの方々はぜひ知っておいてください。
歯から除去した異物。こんな白い不透明なストローの場合もあります。
よく見ると透明なストロー?が歯の根元に。数年間放置され、歯はグラグラでした。
すぐ上のケースで除去した透明なストロー様の物。