2022年08月27日
ストローが歯にはまる事故 あるメーカーの対応
お子さんの歯(主に1~4歳児の乳歯の前歯)にストロー等の円筒状の異物がはまり込んでしまい、異物の色が透明や白色の場合に正しく診断されずに年月が経って歯にダメージが及ぶ事故。
この事故については以前から多数の報告があり、私も2019年に経験したケースの異物除去の動画や写真をこのブログ、Twitter、YouTubeでご紹介することで事故防止の啓発活動をおこなっています。
2020年にはこの症例とSNSを通じた啓発活動について日本小児歯科学会で発表しました。
さらにその後、小児の事故のデータベースとして多くの方に活用されている日本小児科学会の傷害速報(Injury Alert)にも掲載していただきました。
原因となる円筒状の物でストロー以外に多いのがパイプ枕等の中にあるパイプビーズです。
2021年の3月にTwitterをご覧になった当時1歳11か月児の保護者の方から連絡をいただきました。
授乳時などに大人が座って使用するクッションの中のパイプビーズが洗濯の際に中から洩れて、お子さんの歯にはまったのですが、私のTweetをご覧になったことがあったのでピンセットですぐに除去できたとのことでした。
おそらく床に落ちたものをお子さんが拾って口に入れたのでしょう。
透明な製品なので、もし事前の情報をお持ちでなければ事態を把握するのはむずかしかったかもしれません。
このケースでは原因となったパイプビーズの入ったクッションの製造・販売元が「トコちゃんベルトの青葉」(有限会社青葉)という会社であることが判明したので、私からメールで連絡を取り、いくつか資料も提供してみました。
すると、すぐにそのメーカーの役員の方から返信をいただきました。
そのような事故があることをご存じなかったこと、マタニティケア用品やベビーケア用品を多く手掛けている会社でもあり事故防止にご尽力いただけるとの回答を得ました。
ほどなくホームページの製品説明に、歯にはまる事故への注意喚起を追記していただきました。(現在は下記の改良についての説明分・図も掲載されています)
さらにその後およそ1年をかけて関連製品のパイプビーズの色を透明から青色に変更していただいただけでなく、負荷がかかってもパイプビーズが出ないような構造の変更や縫製の強化といった数々の改良をおこなってくださいました。
この事故の特徴は、事故そのものを防止するというよりも早期に発見して異物を除去すれば大事に至らなくて済むという点です。
ストローやパイプビーズが白色や透明である場合に、歯にスッポリはまりこんでいるという単純な事象にもかかわらず、知識や情報を持たないと歯科医師でさえ何が起きているかわからないことがあります。その結果、歯に何かの異常が起きていることは認識されても実態がわからないために長期間放置され、歯や骨に大きなダメージを与えてしまいます。
色のついたストローやパイプビーズであれば異物であることが一目瞭然であり、早期に除去することができます。
写真上が改良前、下が改良後です。(パイプビーズの色だけでなくファスナー部にもいくつもの改良が加えられています。)
この会社から真摯なご回答をいただいたのに力を得て大手の寝具メーカー数社にも同様に連絡して色付きのパイプビーズへの変更をお願いしましたが、前向きなご回答はいただけませんでした。
以前に小児歯科医のグループが飲料メーカーに交渉して、ストローにストライプ模様を入れていただいたという事例がありますが、今回のメーカーは製品の構造や縫製にまで踏み込んでの改善をしてくださいました。
SNS等のネットを介した情報はその取り扱いに慎重であるべきことは申し上げるまでもありません。
しかし、この事故が多発していることと、事故防止のための製品改善にメーカーが動いてくださったということは紛れもない事実です。
この情報を「拡散」していただければ、多くのお子さんたち、保護者の方々が助かることと思います。
正確に伝えていただけるならマスメディア関係の方々にもご協力いただきたいと考えております。
コストや手間も顧みずに対応してくださったトコちゃんベルトの青葉(有限会社青葉)様に感謝申し上げ、この内容がひとりでも多くの方の目に留まることを願ってやみません。