2021年01月04日
歯ブラシ事故に注意しましょう
長い間このブログを更新しておりませんでした。
前の記事の「ストローが歯にはまる事故」をトップに置いておきたかったこともありますが、おかげさまでストローの件はTwitterでも多くの方に見ていただき、昨年の日本小児歯科学会でも発表しました。
また日本小児科学会の傷害速報(Injury Alert)に掲載いただくことも叶い、ご尽力いただいた方々に心から感謝申し上げます。
ストローやそれに類する異物が乳幼児の歯にはまりこんでしまい、すぐにそれと診断されずに歯の健康を損なうお子さんがひとりでも減るように、この情報を多くの方にお届けしたく今後も皆さまのご協力をお願いいたします。
さて、今回のテーマです。
ここ数年、歯ブラシをくわえたまま転倒する事故が増えているという調査結果や報道が目立ちます。
私の所属する日本小児歯科学会、日本小児口腔外科学会でも多数の事例が報告されています。
お子さんが歩きはじめる1歳前後から活動的になる3歳前後に、転倒による歯や口の外傷が増えることがわかっています。
歯ブラシに関してはフォークなどと違って鋭利な部分がないためか危険性を認識していない保護者の方も多いようですが、くわえたまま転んでお子さんの体重が加われば重大な事故になることもあります。
お箸や綿菓子、アメリカンドッグ、アイスキャンディーの棒などについても同様の危険を考えなければなりません。
もしも、歯ブラシ等をくわえたまま転倒してしまったら、歯ブラシ等が折れていないか、折れていたら破片が体内に残っている可能性がないかをよく見ます。
体内に残っていなくても軟口蓋という口の中の奥の方の柔らかい部分を損傷して血管を傷つけることもありますし、歯ブラシの場合は特に毛の部分には細菌が多く付着しているため、傷口から細菌感染する可能性も低くありません。
気腫と言って空気が入り込むことによって緊急を要することもあります。
以上のことから、歯ブラシの例ならヘッド部分が一瞬でも入り込んだ傷の可能性があれば、CTなどの画像検査や血液検査のできる病院をすぐに受診します。
保護者や保育者が転倒の瞬間を見なかったケースでは、周囲の状況やお子さんご本人の説明だけでは受傷の程度が判断しにくいことも多く、慎重な対応が必要です。
小さなお子さん自身によるブラッシングではほとんど歯垢は落ちないので、虫歯(むし歯)予防のためには保護者による「仕上げみがき」が大切ですが、少し大きくなれば習慣を身につける意味でお子さんに歯ブラシを持たせることも増えてきます。
その際は、座った状態から立てないよう、歩き回れないように工夫をし、目を離さないことが重要です。
安全性を考えて柄の部分に力が加わると曲がる歯ブラシも市販されています。
これをお子さんに持たせれば安心と思ってはいけませんが、一つのアイディアではあると思います。