小児歯科にもいろいろあります・・・

意外に知られていないようですが、歯科医院の6割以上が「小児歯科」という看板を掲げています。
「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4科は歯科医師であれば自由に標榜(看板やホームページで掲げること)できます。
その一方、およそ10万人の歯科医師の中で小児歯科専門医の資格の保有者は私を含め約1200名と1%超程度に過ぎません。

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しかし、小児歯科専門医の資格を持たなくても専門知識や研修歴を問われることもなく「小児歯科」の看板を掲げることは自由です。

昨今、歯科医院経営は厳しいことから、歯科医院開業を支援する業者は、たとえば「テーマパーク型小児歯科」というコンセプトで開業しようとする歯科医師に小児患者さんを集めるノウハウやグッズを(多額の報酬と引き換えに)伝授・提供します。
もともとはお子さんたちに楽しい遊び場やコスプレ衣装を提供しつつも、しっかりした小児歯科診療を実践している小児歯科医院がいくつかあり、経営手法としても診療内容の面でも高い評価を受けていました。
そのスタイルの診療以外の部分、たとえば「ゆるキャラ」的な着ぐるみやテーマパークのような内装、様々なイベント開催やリーフレット等をセットにして提供する業者が出現し、経営セミナーも開かれています。
その結果、ちょうどコンビニエンスストアのフランチャイズチェーンのように外観や内装、開催イベントがよく似た小児歯科医院が各地に存在しています。
お子さんたちが受診しやすいかわいい雰囲気の中で、虫歯(むし歯)予防のお話を聞いたり遊んだりする姿を保護者が写真を撮ってSNSにアップすれば患者さんは集まるのかもしれません。

小児歯科の専門雑誌「月刊小児歯科臨床」に寄稿した大学の小児歯科学の教授は「小児歯科診療としての最低限の臨床診断や治療のレベルに達していない歯科医師が増えている」「歯科医院経営セミナーの案内の中で『小児歯科』を患者集客の経営的手段として考える内容のことが載っており、若い歯科医師がこのような考えを持つことを危惧しています」
(小児歯科臨床2020年10月号より引用)と記しています。
また、小児歯科診療の不適切な事例として「ラバーダム法が使えない、使わない」「麻酔注射をしないを売りにし、罹患歯質を残したまま充填処置」等を指摘されています。

コンビニでは大手メーカーが作った物を売っている限り販売商品の品質にばらつきはありませんが、よく似た歯科医院でも実際の治療内容はそれぞれ異なることを心しなければなりません。

ここから、小児歯科専門医として対応した症例を少しお示しします。

最近、上の前歯が外傷(怪我)で折れた1歳児が歯科医院を受診したが治療も抜歯も受けることができなかった結果、脳にまで細菌が感染し「脳膿瘍」となった症例が小児口腔外科学会で報告されました。
同じことは重度虫歯(むし歯)でも起こり得ます。
写真は当院で治療した初診時1歳11か月のお子さんの治療前後のものです。
上前歯4歯が膿んでいましたが、感染根管治療(歯の根の治療)後にピド・フォームクラウンで修復し、5回の通院で完了しました。

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次はシーラントについてです。
1本でも虫歯(むし歯)になってしまったお子さんは、に虫歯(むし歯)を免れている奥歯を守るためにできるだけ早くシーラントをした方が良いのは当然だと思いますが、実行されていないケースも目にします。
シーラントはただ適当に塗れば良いわけではなく、ラバーダム防湿下で繊細なテクニックで実施しなければ本来の目的を達成することはできません。
処置前後の写真です。

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コロナ禍で医療とは何かが問われています。
病で苦しむ人を自分の知識と技術で助け、その後の予防をしていくことが仕事であるのは歯科医療も一般医療と同じです。

当院では小児歯科学の基本どおりにラバーダムを使用しながら、虫歯(むし歯)になってしまったお子さんを再発がないように治療し、その後も歯のことで苦労しないようにエビデンスに基づいたシーラント等の処置を今後も続けていきたいと思います。