学校歯科健診の判定と現実の虫歯(むし歯)とのギャップ

学校歯科健診、幼稚園や保育園の歯科健診、3歳児健診などの幼児健診に代表される集団健診は、あくまでもスクリーニングであって正確な診断の場ではないということや、集団健診の意味と限界については前記事にも書きました。
したがって集団歯科健診の結果に一喜一憂することはないわけです。
歯科医院での精度の高い診査を定期的に実施し、良質な予防処置や治療を受けていれば学校歯科健診等で虫歯(むし歯)に関しては指摘される可能性は低くなります。

一方、集団健診で指摘されなかったからと言って安心してしまうと、検出しきれなかった虫歯(むし歯)が知らないうちに進行してしまう事態となります。

私は先日も学校歯科医の研修を受けたばかりですが、その研修の場でも講師が写真を見せて、たとえば虫歯(むし歯)なのか初期虫歯(むし歯)の疑いCo(シーオー)なのかを受講者が判定しました。
それはそれで、集団健診の精度管理の向上には寄与するでしょう。
しかし、目で見る「視診」が中心で診査環境も良いとは言えない学校歯科健診等の集団健診では全体像はわかりません。

少しシミュレーションをしてみます。
下の写真の3歯(乳歯2歯と永久歯1歯)を学校歯科健診であればどのように判定されるでしょうか。

before

赤い矢印の部分はCR(コンポジットレジン)修復がしてありますが、保護者の方が見ても問題がありそうとお感じになるでしょう。
私が学校歯科医として診査したなら、これは修復完了(健診に用いる記号では〇)とはせず、再治療が必要な虫歯(むし歯)としてCと判定するでしょう。
しかし残りの2歯は、溝に着色はあるものの大きな虫歯(むし歯)とは判定できず、学校健診レベルでは初期の虫歯(むし歯)が疑われるとしてCo(シーオー)と判定するかもしれません。
さて、このケースを実際に歯科医院の設備のもとで診査をし、治療してみました。
学校健診ではX線も使えず、歯を乾燥させるエアーもないので歯と歯の間の虫歯(むし歯)は検出困難です。
このケースでは咬翼法(バイトウイング法)X線を撮影すると、それぞれの歯の間に深さのある虫歯(むし歯)がみつかりました。
ラバーダム防湿をすることでも、歯の間の虫歯(むし歯)が見えてきます。

局所麻酔をしラバーダムを装着して、まずは、赤い矢印のCR修復を除去してみます。
ご覧のとおりです。

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う蝕検知液を使用しながら、修復物の下からあらわれた虫歯(むし歯)を慎重に削っていきます。
また、初期虫歯(むし歯)程度と思われた残りの2歯の溝の虫歯(むし歯)もかなり深く、学校健診レベルの診査結果とは大きく異なる状況がわかってきます。
結局、感染歯質(虫歯=むし歯 に侵された部分)を全て除去すると下の写真の状態になりました。

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写真にはありませんが、マトリックスとウエッジという器具を用いて、歯の間の形態を作って元のような自然な丸みを再現していきます。

CRによる歯冠修復(虫歯=むし歯の充填治療)が90%程度完成した状態が下の写真です。
あとは仕上げの研磨と細部の微修正をし、かみ合わせの調整をすれば終了です。
唯一虫歯(むし歯)を免れた溝にはシーラント処置をします。(写真右上端のピンク色の部分。)

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近年では、臼歯部(奥歯)の歯の間の治療に際し、できるだけ咬合面(歯のかみ合わせる面)から削らずに隣接面(歯の隣り合う部分)からアプローチすることも提唱されていますし、MI(ミニマルインターベンション)と言って削る範囲を必要最小限とする考え方も主流になりつつありますが、このケースでは適応となりませんでした。
しかし、ラバーダム防湿によって唾液に含まれる細菌や水分をシャットアウトして治療すれば耐久性は格段に向上します。

もちろん、治療するばかりでなく食生活やブラッシング・フロッシング、今後の定期診査等についてもアドバイスをしていきます。
このケースで今後長期的に良好な経過を得るのに最も大切なのは、保護者の方がこのお子さんに毎日フロスをしてあげることだと思います。

私自身も学校歯科医と保育園の歯科園医を長年やっていますし、平塚市の1歳6か月健診、3歳児健診、2歳児歯科健診も年に数回担当しています。
集団歯科健診にも大切な意味があること、しかし歯科医院での診査とは大きなギャップがあるということの双方を常に意識しながら健診や診療をしています。
保護者の方々にも、両者の違いをご理解いただければ幸いです。

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