小児歯科専門医

早いもので「今年もよろしくお願いします」と書こうと思っていたら、もう2月も半ばになってしまいました。

11日の祝日に、名古屋で「全国小児歯科開業医会(JSPP)」のフォーラムがあり、出席してきました。
日本各地の小児歯科を専門とする開業医が100名以上集まっての勉強会は、すばらしい内容でとても参考になりました。
近々平塚歯科医師会のセミナーで説明役をすることになっているのですが、それにも早速反映させたいと思います。

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小児歯科を専門とする歯科医師は全国レベルでみればたくさんいるのですが、地域ごとに考えると多くはありません。
日本の歯科医院のおよそ半数が「小児歯科」を標榜(看板に掲げること)していますが、専門性の高い歯科医師はごくごく一部です。
そのため、専門医にはその専門性を求めて広い地域から患者さんが来院されます。

当院にも先月は神奈川県内だけで19の市や町から、他都県を合わせると20地域以上からの来院がありました。
名古屋のフォーラムには全国の高名な小児歯科医が何人も参加されていましたが、私も信頼するスタッフと共に、規模は小さくともしっかりした専門性を維持していきたいと思います。

小児歯科 シーラント、フッ素より先に的確な診断

小児歯科においてフッ素(フッ化物)やシーラントは予防処置として重要な位置づけであるのは申し上げるまでもありません。
しかし、それらは虫歯(むし歯)になっていない歯、あるいは初期虫歯(むし歯)に対して有効なのであって、既に虫歯(むし歯)が進行していれば残念ながら削っての治療となります。

しばらく他の歯科医院に行っていて、当院に戻ってきてくださった4歳の患者さん。
歯が痛いとのことで来院されました。
奥歯にボテッとしたシーラントがしてありました。(黒い矢印)
比較的最近に受けた処置とのことでした。

FSとカリエス1

シーラントについてはこのブログの前回の記事をご参照ください。

ラバーダム(治療する歯を隔離して唾液中の細菌の侵入を防ぐ膜状の器材)をしないでシーラントをしたのは明らかで、このようなアバウトな処置がシーラントという処置法の信頼性を揺るがせる(奥歯の溝に過不足なく流し込まないために段差ができ、かえって虫歯(むし歯)を誘発する)原因かもしれません。
正しい方法でおこなえば確実に奥歯の溝を虫歯(むし歯)から守ることができるのですが、シーラントのデメリットを論じる方々は、このような望ましくない結果を恐れたり経験されたりしているのでしょう。
しかし、このお子さんに関してそれよりもっと問題なのは、シーラントをした歯と隣の歯には、歯の間や歯ぐきの近くに虫歯(むし歯)があるのに、それを無視してシーラントがしてあることでした。
上の写真の赤い矢印が虫歯(むし歯)の部分です。

X線で見ると、歯の間に初発した虫歯(むし歯)は既に歯髄近くまで達しています。
赤い矢印の上方の黒っぽい部分が虫歯(むし歯)で、矢印の右側の歯の外形と似た形の黒い部分が歯髄です。

FSカリエス」XP2

乳歯の虫歯(むし歯)は相当深くまで進まないと痛みが出ないのが特徴で、このように進行してから初めて痛みを訴えることが多いのです。
局所麻酔、ラバーダムをして削ってみるとやはり深く広がった虫歯(むし歯)があらわれました。

FSとカリエス2

下は治療終了近くの写真です。
ギリギリの線でなんとか歯髄への処置は回避でき、CR(コンポジットレジン)充填で済みました。

FSとカリエス3

他院の批判は慎むべきでしょうが、今回は書いてしまいます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

You Tubeで「小児歯科」と検索すると、私がAngel Dental Clinicとしてアップロードした「小児歯科 低年齢児の虫歯治療の実際」「乳幼児の重度虫歯 治療の実際」という動画の他に、「小児歯科の増患・集患」というような歯科医院向け経営コンサルタントさんの動画が出てきます。
それによれば、小児歯科診療は成人の患者さんを呼び込むためのマーケティングのツールということのようです。
特に最近開業された歯科医院の経営戦略の上で、お子さんはそのご家族に自院に来てもらうためのきっかけ作りに使われているような印象です。
実際には虫歯(むし歯)があっても治療らしい治療もしないで、上記のような緻密とは言えないやり方のシーラントや簡便な方法でフッ素(フッ化物)塗布をする程度。
痛くもなく泣くこともなく、ご褒美のおもちゃやシールをもらって帰るとなれば、お子さんたちにとっては楽しくテーマパークに行ったか、せいぜい歯医者の体験教室に行ったような感じでしょう。
詳しい診査や記録の保存、X線撮影もしないなら、歯と歯の間の虫歯(むし歯)も発見できません。
幼稚園や保育園で知り合った保護者の方々の口コミやLINEその他ネットのSNS等で「子どもにやさしく、夜も遅くまでやっていて駐車場も完備」な歯科医院が人気になっていくのは必然です。
でも、逆に言えば駐車場もない当院に、遠方や海外からなぜ多くの患者さんが来てくださるのでしょうか。

上記のお子さんの場合、定期的に通院していた歯科医院のプレイスぺースで楽しく遊んだりしている1~2年の間に、奥歯の間の見えにくい部分で虫歯(むし歯)が進んでしまったようです。

こうした見えにくい虫歯(むし歯)は、幼稚園・保育園での集団健診でも見つかりにくいため、かなり進行してしまってから来られるケースも多いのですが、私の立場からすると結局は「もう少し早くお会いできれば」と感じることが少なくありません。

歯科医院経営が苦しい時代ですので、ひとりでも多くの患者さんを獲得するための手法があるのは理解できますが、確実な診断と的確な処置・治療こそが医療であると思います。

小児歯科診療 シーラント

シーラントをしておけば良かった・・・。
先日、定期診査(定期健診)におみえになった3歳後半のお子さん。
半年前の健診の際に、削って治療するべき虫歯(むし歯)はなく、全ての奥歯にシーラント(虫歯(むし歯)になりやすい奥歯の溝を削らずに埋める予防処置)をしようとご提案したのですが、お母さまも私たちも時間に余裕がなく、「半年後の健診のときにシーラントをしましょう」と見送ってしまいました。
上のお子さんには虫歯(むし歯)の治療経験があったので、このお子さんにも虫歯(むし歯)になるリスクがあるのはわかっていたはずなのに・・・。
そして、半年後。
残念なことに奥歯8本のうち3本の溝の部分が虫歯(むし歯)になってしまっていました。
3歳半より小さなお子さんは、下記するラバーダムの装着だけで泣いてしまうことも多いのですが、「ああ、あの時見送らずにシーラントをしておけば良かった」とたいへん悔やみました。

FSしておけば

局所麻酔の後、ラバーダム(治療する歯を隔離して唾液中の細菌の侵入を防ぐ膜状の器材)を装着して虫歯(むし歯)部分を削っていきましたが、ご覧のように1本はたいへん深い虫歯(むし歯)となっていました。

FSしておけば治療中深い

慎重に治療を進め、CR(コンポジットレジン)で修復しました。
虫歯(むし歯)になっていなかった奥歯や、治療した歯でも無事だった溝にはシーラントをします。
上の写真でお見せした2本の虫歯(むし歯)の治療後の写真です。

FSしておけば治療後

シーラントを全てのお子さんに勧めるべきかどうかは、議論が分かれていますが、当院では基本的に推奨しています。
シーラントの奥歯の溝に対する虫歯(むし歯)予防効果、あるいはごく初期の虫歯(むし歯)の進行抑制効果は絶大で、科学的にも高く評価されています。
近年は新しい製品も発売されていて、今年に入って歯科関係の雑誌数誌で特集が組まれました。
小児歯科学会でもシーラントに関するセミナーに出席してきましたし、当院エンゼル歯科でもメーカーの方に来ていただいて院内勉強会を開催しました。

研究者やメーカーの方々が口をそろえるのは、同じ製品であってもテクニックによって結果が左右される、ということでした。
奥歯の溝に過不足なくシーラントを流し込むのは繊細な技術と経験が必要です。
歯が生えきっていなくて使えない場合を除き、ラバーダムを使用することが大原則である、ということと、定期診査(定期健診)によって状態をチェックしていくということを実践すれば、多くのお子さんたちを虫歯(むし歯)から守ることができる歯科処置です。
それだけに冒頭に記したエピソードが残念で残念でならなかったわけです。

別のお子さんのシーラント処置前です。

FS 前

こちらがシーラント後の写真です。

FS後

虫歯(むし歯)予防と言えばフッ化物(フッ素)が有名で、シーラントの知名度はまだまだ低いですが、現代人を虫歯(むし歯)から守る上で、強力な私たちの味方です。