2013年10月19日
子どもの虫歯治療 重症例のその後
子どもの虫歯治療、特に低年齢で重度のケースの治療を実施している歯科医院は少なく、当院には遠方の患者さんの保護者からの問い合わせや来院が頻繁にあります。
以前にも書きましたが、現在では全国の歯科医院数(約68.000)の半分以上(約39.000)が「小児歯科」と標榜(ひょうぼう=看板に掲げること)しています。
矯正歯科や歯科口腔外科と比べると、特別な研修歴がなくても標榜しやすいイメージがあり「小学生などの小児も診療しますよ」という歯科医院側からのメッセージにもなるので、新たに開業する歯科医院のほとんどが「歯科」と併せて「小児歯科」を掲げます。
しかし、その中で乳幼児の重度虫歯に対応できる歯科医師は限られます。
会費さえ納入すれば所属できる日本小児歯科学会の会員数(約4.400名=大学等に勤務する歯科医師も含む)から推測すると、小児歯科を標榜している開業歯科医師の学会入会率は10%にも満たないのが現実です。
学会に入っていることで得られる小児歯科臨床に関する情報量はかなり多いと思うのですが。
小児歯科学会の会員の中でも、厳しい審査や資格更新のための研修を経た歯科医師に与えられる日本小児歯科学会の認定医・認定専門医(合計で約1.400名)はその有資格者であることを広告することが許されてはいますが、一般の方々からは単に小児歯科を標榜している歯科医院との違いはわかりにくいでしょう。
もちろん、小児歯科の認定専門医や小児歯科学会員でなくても良い医療を提供する歯科医師はたくさんいます。
乳幼児、低年齢児の場合、重度虫歯、重症虫歯でないのなら、ご自宅から近い歯科医院を受診した方がその後のフォローや緊急時の対応の面でも望ましいと思います。
一方、多くの地域では通院1時間圏内くらいに小児歯科の専門性の高い医療機関があります。
乳幼児、低年齢児で重度虫歯、重症虫歯のケースは下記のサイトをご参考に探されることをお勧めします。
さて先日、当院でも最も低年齢で最重症の虫歯だったお子さんが、当院からの定期診査の勧めには応じていなかったのですが、久しぶりに来院されました。
初診時の状態です。
奥歯には軽度の虫歯がありましたが、重度虫歯だった上の前歯の治療後は、写真のように経過良好でした。
X線的にも問題なしとは言えませんが、歯の揺れや修復物の脱落もなく、しっかりしていました。
硬組織(歯の硬い部分)の虫歯は自然治癒しませんが、根尖(歯の根の先)や歯根膜には特に小児では旺盛な治癒力があり、的確な治療と子ども特有とも言える生体の力が現在の状態に導いたものと思われます。
私自身、こうした経験の積み重ねによってスキルアップさせていただいている面もあります。
人気のテレビドラマ「ドクターX」のように「私、失敗しないので」とは言い切れませんし、良好な経過をたどるまでには患者さん側の生活習慣の改善状況や免疫力の高低なども関係してきますから、すべてのケースでうまくいくわけではありません。
幼いのにがんばって治療を受けてくださったお子さんたちに感謝しつつ経過を見守りながら、最終目標である永久歯の健康の獲得に向けて伴走していきたいと思います。
数日前にもこんな患者さんがみえました。
全力を尽くして治療していきます。
☆従来、「虫歯」でなく「むし歯」と記していましたが、これは虫が原因の病気ではないので誤解されないように、という意図で日本学校歯科医会や日本歯科医師会が推奨している表記に合わせたものです。しかし、新聞等の表記は「虫歯」であり、一般の方々のネットでの検索の便を考慮し、私としては抵抗があるのですが、あえて「虫歯」としてみました。