外傷で歯が抜けてしまったら

小児歯科では歯の外傷(怪我)を診療することがよくあります。
歯の外傷には打撲や破折(歯が割れる、折れる)、嵌入(歯肉や骨の中にめり込んでしまう)等いろいろな種類がありますが、今回は歯が完全に脱落してしまったケース(完全脱臼)への対応法をご紹介します。

完全脱臼の場合、永久歯はもちろんですが、乳歯でも条件によっては元の位置に歯を戻して固定する方法(再植=さいしょく)を試みます。
抜けてしまった歯はできるだけ歯根(口の中にあったときに歯肉の下にあって見えない歯の根の部分)に触らないようにして、歯の保存液(学校や幼稚園、保育園では常備している場合があります)や冷たい牛乳(低脂肪乳や豆乳でなく普通の牛乳)に入れます。

牛乳と保存液

出血等への応急処置をし、歯よりも重大な問題(頭を打っているとか、意識が薄いなど)
がなければ歯科医院に連絡を取って受診しますが、受診までに時間がかかるときは保存液
や牛乳に入れた歯を冷蔵庫等で低温にしておきます。
歯根を包む歯根膜という組織が乾燥してしまうと、再植をしても良好な経過は望めません。

歯科医院では、必要に応じて歯肉等の縫合処置もおこないますが、抜けた歯は元の位置に戻してワイヤーと歯科用の接着剤で固定をおこないます。(私はこの処置の際にもラバーダムを使用します。)
また、抗生剤等の薬剤の投与も実施されます。
写真は乳歯の完全脱臼を再植したケースです。

A脱臼-2

A脱臼-4

固定期間については最短2週間などいろいろな考え方がありますが、当院では多くの場合
1か月から1か月半としています。
固定を除去した後に感染根管治療(歯の内部の治療)をおこない、その後にこの治療の
際に歯の裏側にあけた穴を修復し、経過観察に入る、というのがおおまかな手順と
なります。

A脱臼-6

乳歯については以前は再植をしないというのが一般的だった時代もあり、現在でも否定的
な考え方もありますが、日本外傷歯科学会、日本小児歯科学会、日本歯科医師会は条件に
よっては可能というガイドラインや指針を提示しています。

http://www.ja-dt.org/guidline.html

http://www.jspd.or.jp/contents/main/faq/faq05.html#faq_e0501

https://www.jda.or.jp/park/lose/gaisyou_02.html

低年齢のお子さんの保護者の方は、お子さんの歯が完全脱臼した際には精神的に動揺し、
混乱しているのが普通です。
残念ながら再植できなかった場合でも近い将来に小児用の入れ歯等で補う方法はあります。が、当面再植できれば、保護者の方が動揺や混乱から立ち直って事態を冷静に見ることができるようになるまでの時間を作ることもできます。
その意味からも、私は脱落した歯が乾燥していなくて状態が良ければできるだけ再植を試みるようにしています。

まとめです。
外傷で歯が脱落してしまった場合、まずは受傷部分の止血等の応急処置。次に歯よりも優先する重大な頭部や他の部分の外傷がないかを見きわめたら、乳歯でも永久歯でも歯根部分を触らないようにして牛乳や歯の保存液に歯を浸し、歯科医院へ連絡するというのが望ましい手順です。